おしゃべり倉庫

うちの子がおしゃべりしているだけの倉庫

賢盗と藍 その4

 

数日後―

 

「さ、今日最後の予約はー…新規の…」

 

―ガチャ

 

「おひさ~~~~~~~」

「…はぁ、またお前か」

「ちゃんと予約したでしょ?」

「別に偽名使わなくてもちゃんと受け付けるから次からは本名で予約しろ」

「え、来てもいいの?」

「嫌だが」

「どういうこと!」

 

 

 

「最近の藍はどう?追いかけてくる気配無い?」

「至って平穏だ。お前のことなど記憶から消え失せた」

「まじ?なんかヤバい薬でも飲ませたんじゃないの…いだだだだだ」

「…もう大丈夫だから心配するな」

「はーよかった。それにしてもよく成功したよねあの作戦で」

「まあ作戦というかなんというか…まあよかったんじゃないか」

「なんか含みがあるな…まあ開放されさえすれば俺は何でもいいけど」

「藍も前に進んだんだ、お前からちょっかいだしてくるなよ」

「分かってるって~」

「それと、これ」

「…なにこれ」

「藍から」

「何?え、通帳じゃん…怖いなんで?」

「いつまでも友達の家お邪魔してないで自分の家でも借りるなりして自立しなさいだとよ」

「は~こういうところが面倒だっていってんのに!もう…」

「…その割には頬が緩んでるが?」

「そんなことないやい!ってかお金もらえたらそりゃ嬉しくてニヤけるに決まってるじゃん!」

「…ほう?そういうことにしといてやるよ」

「…ふん!」

 

 

「あ~すっきりした!腰の疲れもスッキリ~!」

「無駄に凝るようなことしてるからだろこのクズ」

「ははは、それほどでも!んじゃまた来るね!おつかれ~~~~!」

「…嫌だと言ってるだろ!」

 

END 


 

以下補足設定

藍と賢盗はこれ以降本当に一切交流していない。街で偶然すれ違うこともあるかもしれないけど、その時はお互い他人のフリしてると思う。

賢盗は表面上束縛が原因で別れたいとしているが、それだけじゃなくて自分のこれまでとこれからの生き方にこれ以上藍ちゃんを付き合わせるのが申し訳無いという気持ちを裏に持ってる。誰にも言わないし自分でも認めないけど。藍のことは人として嫌いじゃないし、これまでの感謝もいっぱいしてる。千紘は話してるうちにそれに気付いたから別れた後も賢盗をないがしろにしない。嫌いだが。定期的に店に来る賢盗を受け入れる、たまに藍の近況報告とかもしてる。

サロンで千紘と話す時の賢盗は無意識で上機嫌。普通に人として気に入ってて一方的に仲良しだと思ってるし店も気に入ってるから普通に常連化してる。千紘は賢盗のクズな部分が大嫌いだが嫌いになりきれないし何だかんだ気があって仲がいいまである。認めたくは無いが。

藍は賢盗がずっと側にいてくれるとは思ってない、再会した後からずっと。だからぶっちゃけこんな作戦無くても賢盗が「別れる」って言って出ていけば終わってたっていう。彼が離れるまでの束の間を楽しめればいいと毎日過ごしてたのでゴネて引き止めるつもりは無かった。千紘に賢盗用の通帳を預けたのは今回の作戦結果報告でいずれ会うだろうと、その時にでも渡しておいてと預けておいた。まあシムズの世界に通帳機能は無いんだけど。ちなみに賢盗が店の常連になってることは知らない。

賢盗が今回の話を持ちかけたのは千紘だからこそ。千紘がいれば今後散々な別れ方した後でも藍のこと幸せにしてくれると思ったからとか。多分千紘がこのワールドに引っ越して来なかったらまだずるずるこの生活してた。罪悪感と共に。

藍はあれから千紘の家に居候しながら新居を探している。もちろん千紘との。あれから盗聴器やGPSなどは使うことは無い。諸々卒業。千紘は藍に気持ちを伝えようとは思ってはいるがそこそこヘタレなのでまだ踏み出せていない。藍から千紘に対する感情は友達以上恋人未満。特別枠ではあるが恋愛感情かと言われるとまだわからない。でも千紘から告白されたら受け入れはしそう。

この後藍は千紘のサロンで髪の毛をばっさり切る。※千紘は美容師の資格持ち