「…えっと、藍」
「…」
「ごめん…私勝手に」
「ううん、いいの。賢盗くんが私に執着してないことは始めから分かってたし」
「…」
「それにね、実は全部知ってたの」
「…え？」
「私、賢盗くんのスマホにGPSと盗聴器付けてるから彼の行動も言動も全部把握してたの」
「と、いうことは…？」
「ええ。賢盗くんが千紘の店に偽名で行ったことも、私と別れるために相談してたことも、作戦も全部聴いちゃった」
「そ、そうだったのか…」
「あの子のわがままに付き合わせて悪役にまでなってもらって…ごめんなさいね。」
「いやそれは別にいいんだけど…その…」
「…？ああ、安心して。もう賢盗くんを追いかけるようなことはしないから」
「！！」
「もうそろそろ潮時とは思ってたの。私だっていい大人だし、現実見ないとね」
「…こんなことしておいて何だが、本当にそれでいいのか？」
「どんだけ素敵に見えるクズ男より、私を大事に思って悪役にまでなってくれる親友と一緒に居たほうが幸せになれると思わない？」
「…まあ、それは」
「でしょう？だからもういいの」
「そうか…」
「さ！賢盗くんの物捨て…いやいっそ私もここから出ていこうかしら」
「！？行動力すごいな…」
「気分を一新したいだけよ。そうだ、少しの間千紘の家に居候してもいい？」
「え、ほ、本気？」
「嫌？」
「そ、そんなわけ！それはもう大歓迎だけど…でもうちそこまで広くなくて」
「寝れたらそれでいいのよ。じゃあ最低限の荷物まとめるの手伝って！」
「あ、ああ…！」
…
「…ほんとにその日に引っ越してくるとは」
「必要最低限の生活小物だけ持って、家具も全部置いてきたからね」
「藍って昔からほんと行動力だけは凄まじいよな」
「まあ、それが良くない結果を招くこともあるのよね…」
「ああ…なんかごめん」
「いいのいいの。もうあんな男のこと忘れて今日は飲みましょ！」
「…そうだな！最近オススメしてもらったいいワインがあるんだ、持ってくる」
「あら嬉しい！じゃあ何かおつまみでも作りましょうか！」
「ああでも私の家冷蔵庫空っぽ…」
「ま！…ちゃんとご飯食べてるのこれ！？まずは買い出しに行くわよ…！」
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