数ヶ月後、ある夏の夜―
「(はぁ…つかれた。バカ紫苑め、宣伝するならせめてワンオペ以外のときにしろ…)」
「~♪」
「(あれ、まだ伊都ちゃん起きてる。スマホに夢中になって…あんな薄着でほんと無防備。)」
「(あー…美味しそう)」
「ひぁ!?え!?奏麻くん!?あ!?近っ…!?」
「…っ!?ご、ごめん今のはほんと無意識で…大丈夫、未遂、未遂だから…!ほんとごめん今すぐ忘れて…ほら!明日もあるし早く部屋戻っ…」
「いやいやいや!無理だよ!?いま奏麻くん伊都の首噛もうとしたよね!?そうだよね!?ってことはさ!?そういうことだよね!?ね!?」
「ちょっ…だめだって、離して…」
「何いってんのこんなチャンス見逃すわけないじゃん!!」
「いや、ほんと待って伊都ちゃん…!一旦落ち着こう…!?」
…
「…あの、伊都さん…もうそろそろ離れてもらっても…」
「この前奏麻くん言ってたよね?愛する以外は脳が拒絶するって。でもさっき無意識に伊都の血求めたんだよね?それってつまりそういうことだよね?」
「よ、よく覚えてたね…う~ん…それは…えっと…」
「ねぇ奏麻くん、チューし…」
「駄目!ほんともう、これ以上は…!自分をもっと大事にして…!?」
「大事にしてるよ。だって伊都、奏麻くんのこと大好きだもん」
「…」
「いい加減認めちゃいなよ。奏麻くんも伊都のこと好きなんでしょう?」
「……」
「そ・う・ま・くん!」
「……はぁ、もういいや。そうだよ。」
「ちゃんと言って!」
「えーあー…今言わなきゃだめ?」
「だめです」
「あーもう…!俺は、伊都ちゃんが好きだよ。正直この家に転がりこんで来たときからずっと好き。」
「え!?それほんと?」
「今嘘つく理由ないじゃん…」
「じゃあずっと両想いだったんじゃんか!!!!!なんですぐ言わないの!?」
「そんな立場じゃないからに決まってるでしょ?!君は人間の女子高校生、俺は吸血鬼なの!」
「関係ないでしょそんなの!!」
「ある!!!」
「ない!!」
「くっ、このままじゃ埒が明かない…もうこの話は終わり!ほら良い子は寝る時間!」
「ちょっと!今までの伊都の努力は…ってかあれ、奏麻くん伊都の血吸わなくて良いの?」
「え、ああ…?いや、そりゃ疲れてるし欲しいけど。夜も遅いし明日に響くだろうから…」
「吸血鬼にあるまじき配慮だね。そんなこと気にしなくていいのに。ほら、どんどこい!」
「自分の血を与える人にあるまじき勇ましさ…それにあまりムードとか無いけどいいの?」
「え、ムードとか気にするものなの…もしかして伊都が思ってるよりえっちな行為…?!」
「いや!そういう訳じゃないけど…!でも一応初めてだし…」
「意外とロマンチスト?」
「う、うるさいなぁ…もういいよ、ほら目瞑って。見られると恥ずかしいから」
「へへ、はーい。ついでにチューしてくれてもいいよ?」
「はぁ…しません。」
…
「大丈夫?傷口まだ痛むだろうし、頭もぼーっとするよね。このまま安静にしてて。」
「ほんとにぼーっとする~…なんか夢みたい。ちょっと痛いのも幸せ…」
「はいはい、もう喋らない。後でベッドに運んであげるからそのまま眠って。」
「はーい…そういえば首から吸うのも一族伝統?それとも奏麻くんの趣味?」
「…趣味。」
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